「音楽遊び」とは一線を画す!音大生のための本場リトミックが育む”調律された体”と”天才脳”
2025.12.10
井上幸子先生スペシャルインタビュー(第3回)
ドリームミュージックキャンプ代表の井上幸子先生は、幼少期の教育がその後の人生を大きく左右すると断言します。特に音楽教育、その中でもリトミックに対する考え方は、「一般的なリトミック」と一線を画しています。幸子先生がニューヨークで学び、日本に持ち帰った「本場のリトミック」の驚くべき効果と、それを幼少期に始めることの決定的な理由について語っていただきました。

本場のリトミックは「音楽遊び」ではない
一般的に「リトミック」と聞くと、幼稚園や保育園で行われるような「音楽遊び」を想像する人が多いかもしれません。しかし、幸子先生は「音楽遊びと本場のリトミックは全く違う」と強調します。
「多くの場合、音楽遊びのように、音楽を使って何か踊ったり歌ったりすれば、それがリトミックだという風に思われています。しかし、本来リトミックは音大生のために作られた教育法なのです。」
本場のリトミックは、システマティックであり、一つ一つ明確な課題が設定されています。それは、子どもたちが気づかないうちに、音楽の中にあるすべての課題を体で体験できるように設計された、まさに特別なメソットです。リトミックの創始者であるダルクローズは、リトミックを習得した体は「調律された楽器のようになる」と表現しました。
3本柱と20以上の明確な課題が脳を鍛える
本場のリトミックには、「音楽遊び」にはない3本の柱があります。
1.ソルフェージュ(Solfege):見て、聞いて、歌うという聴覚を訓練する部分。
2.ムーブメント/ユーリズミックス(Movement / Eurythmics):音楽に合わせて動く、私たちが一般的にイメージするリトミックの部分。
3.即興演奏(Improvisation):自由に即興で好きなように音を作っていく部分。
この3つの全てを指導できるのが、本場のリトミックであり、これらの要素を通じて、子どもの耳と脳と体をつなげていくのです。
また、リトミックの中には、音楽を構成する要素に関する20以上の具体的な「課題」が組み込まれています。
「即時反応、テンポ、ダイナミクス、拍とその分割、拍子、フレーズ、補足リズム、拡大縮小など、本当に数限りなくあります。」
例えば、「即時反応」とは、音楽に合わせて動いて、音が大きくなったら動きも大きく、音が止まったら動きも止まるなど、即座に変化に対応する能力を養います。さらに、「きーらきーら」のような曲に合わせてただ鈴を鳴らすだけでは意味がなく、ピアノも即興演奏で子どもの動きを見ながら弾くことが重要だと言います。

幼少期にリトミックをやる”決定的な”理由
なぜ、このような本格的なリトミックを、子どもの頃からやる必要があるのでしょうか。幸子先生は、その理由を脳の成長の仕組みに基づいて説明します。
「東大などの研究で明らかにされているのは、その人の脳のスペック(容量)みたいなものは、本当に小さい頃、0歳、1歳、2歳、3歳ぐらいに決まるということです。」
脳のスペックという容量が大きければ、その後にいくらでも知識やスキルを「いっぱい入れていける」。しかし、この容量が小さく決まってしまうと、すぐに「いっぱいいっぱいになってしまう」のです。
この脳の容量を決める重要な時期こそ、リトミックが最も大きな効果を発揮する時です。
特に、耳の敏感期は0歳から3歳までとされています。絶対音感を身につけるのも、この時期にかかっているのです。音楽的な素養を育むこの一番早い敏感期に、リトミックを通じて耳と脳と体を連動させる訓練をすることが、子どもの可能性を最大限に引き出します。
幸子先生が指導する教室では、その効果が目に見えて現れていると言います。
「やっぱり0歳からやってた子は、3歳ぐらいになると、本当にリーダーさんになりますし、よく聞いています。何をやるにしても、パッと音を聴いた瞬間にやるぐらいの速さがあります。」
リトミックは、ただ音楽の才能を伸ばすだけでなく、集中力、表現力、そして情緒を豊かにし、人生の基盤となる能力を築き上げる上で、不可欠な教育法なのです。

「好き」という感情が未来を切り拓く
リトミックを幼少期に始め、その後も継続的に音楽と関わる環境を用意することが、子どもたちの人生を豊かにします。幸子先生は、リトミックの先にあるピアノやドラム、ギターといった様々な楽器の指導にも力を入れています。
「せっかく音楽の基礎を学んだのに、そこでおしまいじゃなくて、音楽が身近にある子どもたち、ずっと音楽が好きな子どもたちを育てていきたい。」
音楽は集中力や表現力を養うだけでなく、何より楽しく、情操教育にも重要です。
そして、リトミックで培われた「好き」という気持ちは、将来AIが多くの仕事をこなす時代において、特に重要になると幸子先生は語ります。
「普通のことだったらもうAIもやってくれるから、自分はこれだっていうものがないと、これからはいやっていけないというか、輝いてはいけないのかなって思います。(中略)好きなことや、やりたいこと、なんか、自分はこれだっていうものを見つけられるっていうのは、大事なことなのかな。」
幸子先生の教室から育った子どもたちが、ピアノ教師、裁判官といった様々な道で活躍しているのは、幼少期に脳のキャパシティを広げ、本場のリトミックを通じて感性を磨き、「好き」という強い軸を見つけた結果と言えるでしょう。幸子先生は、これからも地域で一番の、そして先生たちが経済的にも豊かになれる総合的な音楽教室を、全国に広げていきたいと展望を語りました。
聞き手・執筆:美濃部 哲也(M&I Inc.)
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